化膿性汗腺炎とは、皮膚の中で汗を作るところ(汗腺)に起こる自己免疫異常による慢性的な炎症のことです。主にわきの下や股間などにできます。この病気は非常に痛みが強く、患者さんの日常生活や精神面にも大きな影響を与えます。
化膿性汗腺炎は、毛包という皮膚の中で毛髪が生えてくる部分に自然免疫の異常が起こり、慢性的な炎症を引き起こした状態です。毛包は、わきの下や陰部や肛門の周り、乳房の下などに多くあります 。毛包は思春期以降に発達し、ストレスや性的興奮などで活性化されます。毛包から分泌される汗は、皮膚表面で細菌と反応して体臭の原因となります。
化膿性汗腺炎の原因は不明ですが、いくつかの要因が関係していると考えられています 。
- 毛穴の閉塞:毛穴が角質や皮脂などで詰まると、毛包から出た汗が皮膚内に溜まります。これが炎症を引き起こすきっかけとなります。
- 自己免疫異常:自分の組織を攻撃する免疫細胞が毛包に集まり、慢性的な炎症を起こします。このメカニズムはまだ完全に解明されていませんが、一部の患者にはγセクレターゼをコードする遺伝子群(NCSTN,PSENEN,PSEN1)に機能喪失変異を持つことが発見されています。
- 細菌感染:毛穴が閉塞したり、皮膚に傷がついたりすると、細菌が侵入しやすくなります。特にブドウ球菌や大腸菌などが化膿性汗腺炎に関与していることが多いです。しかし、細菌感染は化膿性汗腺炎の主因ではなく、むしろ結果として起こるものだと考えられています。
- ホルモンバランス:男性ホルモン(テストステロン)や女性ホルモン(エストロゲン)のバランスが崩れると、毛包の分泌量や粘度が変化し、毛穴の閉塞や細菌感染を促進します。
- 遺伝的素因:化膿性汗腺炎は家族内で発生することが多く、遺伝子的な要素が関係している可能性があります。
- 生活習慣:肥満や喫煙は化膿性汗腺炎の発症リスクを高めます。また、通気性の悪い衣服や下着、デオドラントやパウダーなどの化学物質、わき毛の剃毛なども皮膚の刺激になります。
化膿性汗腺炎の症状は、以下のようなものがあります 。
- 皮膚の隆起:毛包がある部位に、赤く腫れたにきびのような隆起ができます。これは毛穴が閉塞して炎症が起こったものです。
- 膿瘍:隆起が大きくなって壊死し、内部に膿が溜まった空洞ができます。これは非常に痛みを伴います。膿瘍はしばしば破裂して膿が流れ出しますが、治癒しても再発しやすいです。
- 瘻孔:膿瘍と皮膚表面との間に永続的な通路ができます。これは瘻孔と呼ばれ、そこから膿や分泌物が出てきます。瘻孔は治癒しにくく、臭を放ちます。
- 瘢痕:膿瘍や瘻孔が治癒すると、その部分に瘢痕が残ります。瘢痕は皮膚を硬く引っ張り、動きを制限したり、リンパ液の流れを妨げたりします。
- 心理的苦痛:化膿性汗腺炎は見た目や臭いが気になるだけでなく、激しい痛みやかゆみを伴います。これらは患者さんの日常生活や社会生活に大きな影響を与え、抑うつや自己嫌悪などの心理的苦痛を引き起こします。
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