コルヒチンで化膿性汗腺炎の症状と生活の質が改善！研究結果を解説

はじめに

化膿性汗腺炎とは、皮膚の中の汗腺や毛包という部分で自然免疫が異常に反応し、慢性的に炎症を起こす難治性の病気です。この病気には現在確立された治療法がなく、患者の生活の質を大きく低下させます。しかし、コルヒチンという薬が化膿性汗腺炎の治療に有効であることが、スイスの医学雑誌に掲載された研究で示されました。この記事では、その研究の内容と結果を分かりやすく解説します。

コルヒチンとは何か？

コルヒチンは、植物のチューリップやヒガンバナなどに含まれるアルカロイドの一種で、古くから痛風の治療に用いられてきた薬です。コルヒチンは、細胞分裂を阻害することで炎症を抑える作用があります。近年では、炎症性疾患の治療にも応用されており、特に自己炎症性疾患と呼ばれる、自然免疫が過剰に反応する病気に対して有効であることが報告されています。化膿性汗腺炎も自己炎症性疾患の一つと考えられているため、コルヒチンが治療に役立つ可能性があります。

研究の内容と方法

この研究は、ギリシャのアテネ国立カポディストリアン大学医学部第一皮膚科・性病科のリャコウ・アイカテリニ I.らによって行われました。研究の目的は、化膿性汗腺炎の患者の臨床転帰に対するコルヒチンの有効性を検討し、単剤療法として、またはドキシサイクリンという抗生物質との併用で、コルヒチンを評価することでした。

研究には、化膿性汗腺炎の診断基準を満たす44人の患者が参加しました。患者は3つのグループに分けられました。第1グループ（15人）は、単剤療法としてコルヒチン錠0.5mgを1日2回服用しました。第2グループ（14人）は、コルヒチン錠0.5mgを1日2回と、ドキシサイクリン錠100mgを1日1回服用しました。第3グループ（15人）は、コルヒチン錠0.5mgを1日2回と、ドキシサイクリン錠40mgを1日1回服用しました。治療期間は6ヶ月でした。

治療中の疾患の重症度を評価するために、Hurley Scoring Systemと国際Hidradenitis Suppurativaスコアシステム（IHS4）という2つの指標を用いました。Hurley Scoring Systemは、化膿性汗腺炎の病期を1から3の3段階で分類するもので、1が最も軽度で3が最も重度です。IHS4は、化膿性汗腺炎の症状の数と範囲を点数化するもので、0から400までの範囲で評価します。0が最も軽度で400が最も重度です。これらの指標は、治療前と治療後に測定しました。

また、患者の生活の質を評価するために、Dermatology Life Quality Index（DLQI）というアンケートを用いました。DLQIは、皮膚病が日常生活に及ぼす影響を10項目で尋ねるもので、0から30までの範囲で評価します。0が最も良好で30が最も悪いです。このアンケートも、治療前と治療後に回答しました。

研究の結果と考察

研究の結果は、以下のようになりました。

• Hurley Scoring Systemによると、治療前の平均病期は2.1でしたが、治療後は1.6に低下しました。これは、コルヒチンによって化膿性汗腺炎の病期が有意に改善されたことを示しています。
• IHS4によると、治療前の平均スコアは113.5でしたが、治療後は54.7に減少しました。これは、コルヒチンによって化膿性汗腺炎の症状の数と範囲が有意に改善されたことを示しています。
• DLQIによると、治療前の平均スコアは18.3でしたが、治療後は8.9に低下しました。これは、コルヒチンによって化膿性汗腺炎が患者の生活の質に及ぼす影響が有意に改善されたことを示しています。
• これらの指標は、コルヒチンを単剤療法として用いた第1グループ、コルヒチンとドキシサイクリン100mgを併用した第2グループ、コルヒチンとドキシサイクリン40mgを併用した第3グループのいずれでも有意な改善を示しました。また、グループ間での差は統計的に有意ではありませんでした。つまり、コルヒチンは、単独でも、またはドキシサイクリンとの併用でも、化膿性汗腺炎の治療に同様に効果的であることがわかりました。
• 治療中に、患者の誰もが有害事象のために治療を中止することはありませんでした。コルヒチンの主な副作用は、消化器系の不快感や下痢ですが、これらは軽度で一時的でした。コルヒチンは、一般的に安全で忍容性の高い薬であると言えます。

以上の結果と考察から、コルヒチンは、化膿性汗腺炎の患者において、病気の重症度と生活の質を改善する有効な治療法であると結論づけられます。コルヒチンは、自己炎症性疾患に対する新しい治療法として注目されており、今後の研究によって、その効果や機序がさらに明らかになることが期待されます

まとめ

この記事では、コルヒチンで化膿性汗腺炎の症状と生活の質が改善することを示した研究を紹介しました。コルヒチンは、植物由来の薬で、炎症を抑える作用があります。化膿性汗腺炎の患者44人を対象にした後ろ向き研究では、コルヒチンを単剤療法として、またはドキシサイクリンとの併用として、6ヶ月間服用した結果、病気の重症度と生活の質が有意に改善されたことが示されました。コルヒチンは、化膿性汗腺炎の新しい治療法として注目される薬であると言えます